Chatham House のイベントに行ってきた。
Dead Aid: Why Aid is Not Working and How There is Another Way for Africa
という本のbook launchで、著者のDambisa Moyoが本の紹介をして、その後Q&A。
正直なところ、ザンビア出身でHarvardとOxfordで学び、世銀で働き、
今はエコノミストとして働く、という華々しい経歴の、しかも女性が書いた、
というのがこの本で一番インパクトがあるところ。 それ以外の内容については
そこまで新味があるわけではないし、ちょっとそれは変なのではないかと思うところも多い。
Sachs と Easterly と Collier の折衷みたいな感じもする。
「援助機関からのお金は、石油みたいなもので、
アフリカの政府はその使途に対するアカウンタビリティがない。
だから汚職もするし、効率もあがらない。 逆に、プライベートセクターから
自分でお金を持ってくるようになれば、そのお金をきちんと使おうという
インセンティブが生まれるし、政府歳出に税金が占める割合が増えれば
政府は国民に対してもっと責任を負うようになるだろう。
だから援助なんてないほうがいいのだ。」
というのが、ざっくりとした彼女の主張なのだが、
そもそも援助のお金がそんなにゆるいものだったとは思えない。
世銀・IMFの構造調整融資があれだけ批判されているのも、
押し付けというか、受け取り側の行動/選択の自由を
大きく制限するようなそのやり方に理由があった。
国民に対してアカウンタビリティがない、というのが問題だったとしても、
少なくともドナーに対してはそれはあったように思う。
もちろん、汚職があってずぶずぶの関係で、という事例があるのは事実だが、
それはプライベートセクターの資金であっても同じこと。
プライベートセクターのお金であればきちんと透明性を確保できる、
というのは、例えばアフリカの石油採掘の様子をみれば
あまりにナイーブな議論に思える。 Paul Collier が言っているように、
構造調整融資の代わりにガバナンスを“conditionality” として使う方が現実的にみえる。
それから、こんな経済危機の中でどこからお金を持ってくるんだ、という話。
これはQ&A でも出ていたのだが、「イギリスでお金を集めるのは無理でも
中国や中東に行けば、、」というのが彼女の返事だった。
巨額の資金を抱える政府系ファンド等を念頭においての発言だと思うのだが、
これもちょっと疑問に思う。 仮に中国のファンドがアフリカに出資するとして、
そこに政治的意図が全く入らないとは思えないし、世銀が中国に変わったとしても、
国民に対するアカウンタビリティの欠如という構造に変化はない。
加えて言えば、こうした状況に懸念を感じる市民社会の立場からしても
世銀・IMFが中国に変わってしまった場合、アドボカシーを通じて
その方針を変えていこうとするのはより困難になるような気がする。
援助に問題があったとしても、その代替案に問題がないわけではないし、
また、援助だけがアフリカが抱える問題なわけでもない。
She implies that, were aid cut, African governments would respond by
turning to other sources of finance that would make them more accountable.
I think this exaggerates the opportunity for alternative finance and
underestimates the difficulties African societies face.
これは、Paul Collierが、Independentに書いた書評の一節。 全く同感。
追記: あちこちのメディアで取り上げられているようです。

はじめまして、SOASで開発を学んでおりましたsanmuと申します。SOASの先生方が好みそうな議題ですね。WB出身者は自身の出身母体であるWBその他の援助協調で歩調を共にする援助機関を批判する傾向があるようですね。
この記事を読んでケンブリッジのCHANG教授のKicking Awayという本を思い出しました。
投稿: sanmu | 2009年2 月17日 (火) (21:49)
>sanmuさん、
確かに、こうした議論はアメリカよりもイギリスで盛り上がりそうな気がしますね。 私も3年ほど世銀に居ましたが、世銀出身者にそうした傾向があるかどうかは正直分かりません。 批判がある人の方が、本を書いたりあちこちで発言するので目立つ、ということではないでしょうか。
投稿: Hayato | 2009年2 月19日 (木) (00:50)